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24・雑草の輝き

フレデリック・片岡健一
ロックンロール・ニューズメーカー「ロックする文芸本」より





俺はいつのまにかアキラと大親友になっていた。俺とアキラとヒロシでいつも“THE END”のライヴが終わると夜の町をさまよい歩いていた。

そんな、ある日の事…。
アキラがこんな事をいい出した。
「なあ、お前ら今楽しいか?俺はぜんぜん楽しくねえ、もう俺はこんな世の中ぶち壊しちまいてえ、このままじゃあ俺は一生同じ事を繰り返して一生終わるだけさ」
俺はアキラがこんな事を言うなんて夢にも思わなかった。アキラはいつも前向きでバンドで歌ってる時は俺の代弁者であり、憧れでもあった。そんな奴がそんな事をいい出しちまった日にゃ、俺はもう悲しくてしょうがねえ。
そんな時、ヒロシが「ね、ねえアキラ君。君はとっても魅力的な人だよ、僕はいつも君みたいになりたいと思っているのに、そんな事言わないでよ。君はいつも僕達の事を幸せな気持ちにしてくれてるのに」
「そうだよ、アキラ君。きっとここんところスランプなだけさ、また何日かしたらいつもの調子に戻るさ」
しかし、そうはならなかった。アキラは次の日に自殺してしまった。それは突然の死だった。
俺とヒロシは、もう魂の抜けたような生活を何ヶ月も送っていた。俺にとってアキラの死は、まるで自分自身の死のようにとらえていたのだ。それはヒロシも同じだった。俺はもうヒロシと2ヶ月以上会ってなかった。もう本当に何にもする気にならなかったからだ。
そんなある日、ヒロシから電話がかかって来た。
「もし もし 太郎ちゃん」
「ヨオ 久しぶりだな」
「ねえ 今日いつものライヴハウスに行かない?“THE END”のジュンが“F”の奴らにやられたんだって」
「なにぃ…よくわかった。じゃあ7時にいつもの場所で待ち合わせしようぜ」
「うん わかった」
「ガシャ…」
本当はまだ俺はアキラの死ぬ前に言った言葉を忘れてはいなかった。しかし俺は今、どうにでもなれと思っている。よしっ、出掛ける前に、アキラの好きだった、スペンサー・デイビス・グループの『Keep On Running』を聴いてから出掛けよう。あいつは、いつもこの曲を歌っていたっけ。

そう言えばアキラは、俺がいつか小さい時に読んだオスカー・ワイルドの“幸福の王子”っていう童話に出て来る、主人公の銅像みたいな生き方をしていたような気がする。いつも俺達にあいつの血と肉を剥ぎ取って与えてくれて。幸福の王子に出て来る主人公の銅像も、いつも貧しい人達のために、宝石になってる目玉を鳥に頼んで、それをはずして人々に与えたという話だ。俺はアキラも同じだったと思う。まるで神様みたいな奴だったのに、何で死んじまったんだ。アキラが死ぬ最後のライヴで演った新曲の詩はこんな詩だった。

 今日、俺は愚かな自分が見えたよ
 きれいな服をまとったよ
 でも、中身は何にもない
 知っているだろう
 この世の中と同じさ

 今日、俺は花を持って歌を歌ったよ
 俺は美しいと思った
 でも、中身は何にもない
 知っているだろう
 この世の中と同じさ

 もし俺の歌を聞いて
 悲しくなったら
 俺に金を恵んでくれよ

 でも俺の歌の価値は俺の物
 俺の歌の価値は俺の物
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